やたら金庫のダイヤルロックの仕組みに詳しい彼

キャッツアイというアニメが好きでよく見ていた。3人姉妹が父親の作品である美術品を盗むという物語で、主人公である次女の恋人は、キャッツアイを捕まえようとする熱意にあふれた刑事である。主人公は窃盗のためなら刑事である恋人も利用するという、普通に聞いたら身もふたもない設定だけど、盗むものが父親の作品であるせいなのか、ナイスバディな3姉妹だからなのか、あまりしたたかな印象は抱かない。むしろ捕まりそうになるとハラハラし、うまく作品を盗めると「よっしゃー」と思ってしまう自分がいたから不思議だ。だけど、もしこの設定、男女逆だったらどうだっただろうと思う。

もし3姉妹ではなく3兄弟だったら。もし主人公の恋人が女刑事だったら。途端にその物語は女を手玉に取るホスト的な匂いがしてくる。もしその3兄弟が女刑事を利用して盗みに成功したとしたら、スカッとするというよりも後味の悪い嫌な気分が残るだろう。やっぱりキャッツアイは来生3姉妹だからこそ成り立っていたのだ。

なんてことを、私は彼の話を聞きながらぼんやりと思っていた。彼はやたら金庫のダイヤルロックの仕組みに詳しくて、私に対して一所懸命あのダイヤルロックはあーだの、このダイヤルロックはこーだのと説明してくるけれど、私はダイヤルロックになんか興味がないし、この人なんでこんなに金庫のダイヤルロックに詳しいんだろうと、ちょっと引いてしまう。さっきの3兄弟じゃないけれど、もしこの人が泥棒だったら――なんて考え過ぎなのはわかっているし、私は残念ながら刑事じゃないから、先のキャッツアイの話は参考にならない。

とは言え、私が勤めているのは銀行である。時々私の仕事場についてあれこれ詮索してくる彼に対し、適当にはぐらかしているのは、あくまで銀行員としての守秘義務であって、決して彼を疑っているわけではない…と思っている。